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コンゴとアフリカの過去を振りかえ、それらの現状と今後を考えた上で、次の行動へのきっかけになることを願っています。
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昨日、日本アフリカ学会第48回学術大会で、「ルワンダ現政権による人権侵害」について発表しました。と言っても、発表時間はたったの15分(質疑応答を入れて)なので、言いたいことが全部話すことができなかったのですが。。。
 
一般的に「ルワンダ現政権は1994年のルワンダ虐殺を止めた『英雄』であり、ツチは虐殺の『犠牲者』」と知られていますが、私はルワンダ国際犯戦法廷(ICTR)の文書を使って、「ツチもフツも虐殺の加害者であり、犠牲者でもある」と議論しました。ICTRは膨大な証言を収集しているのにもかかわらず、なぜか日本ではICTRに関する研究がほとんどされていません。その意味で、今回ICTRの議論を活用して、ルワンダの違った顔、そして国際法と国際政治間の葛藤について話したことは、意味があったと思います。
 
嬉しかったのは、研究者の先輩2人から発表について褒められたことです。「うすうす、ルワンダはおかしいと思っていたが、歴史が隠されていたとは。日本政府もルワンダ政府に強く言うべき。大体日本には外交の方針がないのが悪い」「フランスではルワンダについていろいろ聞くが、日本では報道されない。このようなことを学会でももっと話すべき」確かに!日本のジャーナリストよ、もっとアフリカの政治について報道して!
 
そして研究者の一人が「日本は『人権大国』になるべき!」と言うのでした。まだ人権小国にもなっていないのに、いきなり大国か。。。もちろん目標は大きく持った方がいいのですが。
 
下記は発表の内容:
1994年の虐殺の際に、ツチ主導のルワンダ愛国戦線(RPF)がルワンダの政権を奪取した。それ以降、開発が急速に進み、ルワンダは「アフリカの優等生」というイメージを国際社会において築いた。その一方で、RPF政権は軍事力、経済力、政治権力を利用しながら、ルワンダとコンゴにおける2つの「虐殺」をはじめとする重大な人権侵害を犯してきた。

RPFによる最初の人権侵害は、1990年に遡る。当時ルワンダの反政府勢力であったRPFが、ウガンダからルワンダに攻め込んだ時である。その後ルワンダは内戦状態になり、1993年2月にはRPFによる攻撃で80万人以上の国内避難民が発生した。そして虐殺が起きた1994年4月から7月にかけて、フツ過激派によるツチを中心とする虐殺は約80万人に上るとされるが、一方でRPFも虐殺に関与し、ある地域では約2~4万人の市民を殺害したという(UNHCR[Gersony Report]1994)。ルワンダ国際戦犯法廷(ICTR)の分析によると、虐殺におけるフツの犠牲者はツチのそれの2倍であった。RPF政権は1996年と1998年の2回、ルワンダ国軍を派兵して隣国のコンゴを侵攻し、かつ侵略した。ルワンダ虐殺首謀者はコンゴに逃げ込みRPFを襲撃したので、侵攻行為は自国の防衛のためであったとRPFは正当化した。しかし、真の目的はコンゴにおける資源の確保であったとされる(UN, S/2002/1146, para65)。

RPF政権による犠牲者は、一般市民に限ったことではない。1995年から2011年2月現在までルワンダ人、外国人に関わらず、RPFに批判的である政治家、外交官、軍人、司法関係者、メデイア、国連、NGO、市民団体や宗教団体とその職員は、RPFによって逮捕、脅迫、国外追放、失踪、投獄、暗殺の対象者になったり、あるいは亡命した。その数は少なくとも計91人、66団体にのぼる(2010年は26人)。2004年から2010年にはカガメ大統領の元側近であった離反者5人も不当に逮捕されたり、暗殺未遂にあった。野党もRPFによって抑圧されたために、2003年と2010年の大統領選挙でカガメ大統領が圧勝した。表現の自由も政治的空間も閉鎖されている。

2008年には「虐殺イデオロギー」法が採択された。1990-4年の内戦や虐殺中にツチだけでなくフツも犠牲になったことを示唆する、あるいはRPFを戦争犯罪人として裁判を求めることを禁じるなど、RPF批判の封じ込めを合法化した。この法律は虐殺の再発予防のためだとされるが、RPFの戦争犯罪人を守ることが目的とされる。世界唯一ルワンダにしか存在しないこの法律は、国際人権法に適しないために、人権団体から非難されている(Amnesty International、”Safer to Stay Silent,”2010等)

RPF政権による人権侵害に対して、国際社会はさまざまな試みを図ったが、進展はない。例えば、2002年ICTRはRPFの虐殺容疑者を起訴したが、当時のICTR検事が国連によって解雇され、それ以降RPFは起訴されていない。フランス政府は2006年、虐殺直前に起きた飛行機の撃墜に関与していたRPF9人を起訴し、またスペイン政府は2008年、ルワンダとコンゴにおける人道に対する罪を犯した、カガメ大統領を含むRPF高官40人を起訴した。しかし未だにRPFからは誰一人逮捕されていない。
そして2010年10月に公表された国連報告書は、ルワンダ国軍が1996年にコンゴで犯した民間人数万人に対する殺戮行為が「虐殺の罪に値する」と結論付けた。また大湖地域での不処罰の連鎖を終焉するために、同報告書は戦争犯罪及び人道に反する罪に司法権を持つ、混成司法機関の設立を支持した。既に1990年代に国連等は、コンゴにおける大量殺害や人権侵害を明らかにしたが、その責任を問う行動は取られておらず、現在もRPF政権は責任を否定している。
 
発表の最後に不処罰について話しましたが、その続きは次回のブログで紹介します。

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プロフィール
HN:
米川正子
性別:
女性
職業:
大学教員
趣味:
旅行、ジョギング、テコンドー、映画鑑賞、読書
自己紹介:
コンゴ民主共和国(コンゴ)やルワンダといったアフリカ大湖地域を中心に、アフリカでの人道支援や紛争・平和構築を専門としています。
過去にリベリア、南ア、ソマリア、タンザニア、ルワンダ、コンゴなどで国連ボランテイアや国連難民高等弁務官事務所職員(UNHCR)として活動。南アの大学院でコンゴ紛争について研究し、2007年―2008年には、コンゴ東部でUNHCRの所長として勤務したこともあり、その経験を活かして現在アドバカシ―に力を入れています。
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