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コンゴとアフリカの過去を振りかえ、それらの現状と今後を考えた上で、次の行動へのきっかけになることを願っています。
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ここのところ、コンゴ東部では緊張感が一気に高まっています。Thomas Lubanga(ルバンガ)被告人が3月14日に国際刑事裁判所‐ICC-で有罪判決を受けた後(ICCが10年前に設立されて初めてのケース!)、2002年コンゴ北東部で彼と一緒に犯罪行為に関わってきたBosco Ntaganda(ンタガンダ)をICCに引き渡すようにという圧力がコンゴ政府にかかっているからです。ンタガンダはTerminate(終結させる、暗殺する)することで有名なため、あだ名は“Terminator“で、2006年にICCに起訴されています。しかしそれ以来、彼はテニスやおいしい食事を楽しむ優雅な生活を送りながら、コンゴ政府軍の将軍を務めています。
 
ンタガンダのICCへの引き渡しキャンペーンが繰り広げている中(アメリカ政府もンタガンダの引き渡しに関してコンゴ政府にプレッシャーを与えていますが、そのアメリカ政府もICCの締約国ではないのだから、説得力がない!)、4月1日―2日の夜、コンゴ政府軍(正確には元CNDPから)から300人が脱走したというニュースがありました。2009年に反政府勢力のCNDP等がコンゴ政府軍に統合して以降、CNDPは政党になったということですが、ルワンダ政府から支援を受け取っているCNDPの影響力は事実上まだ強く、CNDPの軍事部門はまだ存在しています。だから、CNDPとコンゴ政府軍の「並行行政」(parallel administration)が続いていることになります(ややこしい!)。
 
コンゴ政府軍の将軍 (およびCNDPの軍事リーダー) に昇進したンタガンダのICCへの引き渡しによって、和平どころか紛争に戻るというメッセージ(つまりjusticeではなくpeaceの方が優先されるという議論)を国際社会に伝えるために、表面上「脱走」があったと言われています。あるいは、ンタガンダが自分の防衛のために、部下と一緒に逃げた行為が「脱走」として報道されただけかもしれません。その行為の動機は明らかではありませんが、これによって5000人以上の市民がウガンダに避難しました。コンゴ政府軍の中にも、ウガンダに避難した人がいるとか。私がコンゴ東部にいた2007-8年の際も、人々の動きが激しかったのですが、それが繰り返されているんですね。いつも犠牲にされている、本当にかわいそうな一般市民!!
 
なぜコンゴ政府がンタガンダをICCに引き渡さないのか?ンタガンダの逮捕で、コンゴの(見せかけの)和平に問題が生じるという口実がコンゴ政府によって使われてきましたが、真の理由は、コンゴのカビラ大統領とンタガンダの間に「密約」が結ばれていて、後者は前者によって守られてきたんですね。そのカビラ大統領が4月11日、いきなりンタガンダを逮捕すると言い出しました。しかしそれはICCへの引き渡しという意味合いではなく、あくまでもコンゴ国内で逮捕するということです。おそらくンタガンダの問題がやっかいになり、アクションをとりたかったのでしょう。それでなくても昨年11月の大統領選挙では不正が数多く報道され、また選挙後未だに新政府が設置されていなく、国際社会によるコンゴ不信が強まっています。ンタガンダの上司のンクンダが2009年にルワンダで軟禁されたように、同じような目にあうかもしれません。しかし、ンタガンダと違ってンクンダはICCからの逮捕状がなかったので、軟禁が現実的に可能なのか?
 
それにしても、このICCへの引き渡しキャンペーンをフォローして違和感を持つのは、そもそもンタガンダはコンゴ人ではなくルワンダ人であり、本来ならルワンダ政府がICCに引き渡すべきことです。ンタガンダがルワンダ国籍であることは、ICCの逮捕状に言及されています(5ページ参照)
http://www.hrw.org/sites/default/files/2006-icc-warrant-ntaganda.PDF
 
しかし、なぜルワンダ政府はICCへの引き渡しができないのか?ルワンダがICCに調印していないから?またンタガンダはルワンダ人なのに、なぜコンゴ政府軍の将軍なのかという疑問も持たれるでしょう。それがこの両国の複雑な背景を物語っているんですね。下記のHRWのプレス・リリースでわかるように、ンタガンダはルワンダ生まれで、ツチへの差別から逃れるためにコンゴに移住し、ルワンダ現政権(RPF)がまだ反政府勢力であった1990年に加盟し、その後ルワンダ政府軍やコンゴ政府軍で活動しています。このように、ルワンダ人が自分の都合によって両国を越境し、それぞれの政府軍で活動する、またルワンダ系コンゴ人の国籍がはっきりしないという異常なことがこの地域では当たり前になっています。それには、天然資源の搾取とも絡んでいて、だからこそ紛争が絶えないのです。
 
http://www.hrw.org/news/2012/04/13/dr-congo-arrest-bosco-ntaganda-icc-trial
 
それにしてもICCから起訴されて6年経って、やっと国際社会が本格的に動き出しのですから、本当にそののろさにあきれます。もっと早急にンタガンダを逮捕していたなら、何千人、何万人の犠牲者が出てこなかったでしょう。そういう意味では、国連などは不必要に犠牲者を生んでしまったという意味では、犯罪者ですね。”Responsibility to Protect (R2P)(保護する責任)”、”Human security(人間の安全保障)“、”Humanitarian action/intervention”(人道的介入)など国際社会は美化した概念づくりに専念したり、都合によってnon-interference(内政不干渉)だとか、sovereignty(国家主権)という口実で責任逃れをしています。市民の保護や持続的な平和にとって効果的な行動は何かをよく考え、非暴力な手段で早急に移してほしいものです。
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プロフィール
HN:
米川正子
性別:
女性
職業:
大学教員
趣味:
旅行、ジョギング、テコンドー、映画鑑賞、読書
自己紹介:
コンゴ民主共和国(コンゴ)やルワンダといったアフリカ大湖地域を中心に、アフリカでの人道支援や紛争・平和構築を専門としています。
過去にリベリア、南ア、ソマリア、タンザニア、ルワンダ、コンゴなどで国連ボランテイアや国連難民高等弁務官事務所職員(UNHCR)として活動。南アの大学院でコンゴ紛争について研究し、2007年―2008年には、コンゴ東部でUNHCRの所長として勤務したこともあり、その経験を活かして現在アドバカシ―に力を入れています。
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