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コンゴとアフリカの過去を振りかえ、それらの現状と今後を考えた上で、次の行動へのきっかけになることを願っています。
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野党リーダーインガリベ氏の逮捕について、在アメリカ元ルワンダ大使でカガメ大統領の元参謀長であったテオジン・ルダシングァ氏が、Voice of Americaのインタビューで、「彼女は逮捕される理由はない。彼女はテロリストではなく、Freedom fighterだ」と答えました。
 
カガメ大統領は2007年1月に暗殺未遂にあっているのですが、その仕掛け人は上記のルダシングァ氏や彼の兄弟や仲間(南アに亡命し、6月のワールドカップ中に暗殺未遂にあったニャムワサ氏)でした。皆ウガンダにいた元難民でカガメ大統領と共に20年間つきあってきた戦友の仲なのですが、近年大統領から離れていったのですね。ルダシングァ氏は2005年にアメリカに亡命しています。
 
なぜその側近の人々がカガメ大統領から離れたのか。一説によると、自分たちがルワンダやコンゴ東部で犯した過去の罪(戦争犯や人道に対する罪)を負いながら生きるより、告白してアムネステイを要求した方がいいとカガメ大統領に提案したところ、反対に睨まれてしまい、それ以降「危険人物」とレッテルを貼られたとのこと。それで全員、国外亡命したんですね。
 
そのルダシングァ氏が「カガメ大統領は野党などの敵のことをいつも、「テロリスト」「ルワンダの安全保障にとって危険人物」「虐殺首謀者」などと呼んでいる」と指摘しているのですが、本当にそのとおりです。何も悪いことをしていないのなら、何も恐れるものはないはずで、したがって罪のない人を逮捕する理由もないのですが。。。本当に本当に怪しいものです。ということで、ルワンダの政治から目が離せません。
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今日学習院大学で、私の本『世界最悪の紛争「コンゴ」』を読んだ学生と読書会を開き、楽しいひと時をすごしました。そもそも、その授業(読書会)を担当する法学部の飯田芳弘教授がたまたま私の本を本屋で見つけショッキングなタイトルに惹かれて買い、読書会の講師として私を呼んで下さったのでした。
 
飯田先生はアフリカや紛争の専門ではないのですが、私のマニアックなブログもしっかり読んでくださったり、「発禁」されたはずのルワンダ虐殺関連のレポートをネットで見つけて印刷して読んでいることにびっくりしました。いくら仕事のためとはいえ、自分の専門でないものをここまでするとは!そして学生も学生です。読書会に着く前に私はtwitterで、逮捕されているルワンダ野党リーダーについてつぶやいたのですが、読書会に参加していた学生何人かがそれを既に読んでいました。先生も学生もかなり熱いですね!すばらしい!
 
読書会では、2年生と思えないほど、処罰やODA2006年の大統領選挙などについていい質問をしていました。またアフリカに関心が特になかった学生も、「コンゴ東部に行きたくなった」というコメントも。学生の問題意識がもともと高かったのでしょうが、積極的な飯田先生のおかげで、ますます意欲が高まったのでしょうか。先生が学生に与える影響力の大きさを改めて実感しました。私もそのような先生になれれば!
 
それにしても、研究なりスタディアツアーなり、学生にはコンゴに行ってもらいたいものです。土地も資源も権力も略奪しようという「貪欲」を持ってほしくないけど、好奇心が高くあれもしたい、ここに行きたい、また何でも知りたいという「欲望」というか「野心」は常に持ってほしいものです。是非コンゴ行きを実現して、コンゴの悲劇を周りの人に伝え、少しでも状況を改善していきましょうね!
昨日に続いて、「平和構築はきれいごとではない」第2弾。不処罰や司法制度などにフォーカスがあてられています。以下「」が相手の方が言ったコメントで、続けて私の意見が書かれています。

「ルワンダでは和解と許しがされた。ガチャチャ(草の根の裁判制度)でそのような行為があった」しかし真実がそもそも明らかになっていないのに(10月1日付けの国連報告書で真実が正式に明らかになったが、ルワンダ政府は否定した)、その次のステップの和解、そして許しは実現できるはずがありません。そのため現在も、ルワンダ人の野党や平和活動家などが現政権と闘っているのです。アムネステイ・インタナショナルもガチャチャの不公平さを指摘し、ルワンダ国際戦犯法廷(ICTR)も現政権の人は誰一人裁かれていないなど、不合理な点がたくさんあります。

「犠牲者の視点を大切にと言うが、犠牲者が同時に加害者である時もある」確かにルワンダ現政権は両方の面を持っていますが、コンゴ東部の市民に限っては100%ピュアな犠牲者です。
 
「完全にjusticeを解決することはできない。」(私がしつこくjusticeをもっと重視しないと言うと)もちろんそこまで求めていません。例えば2003年にコンゴで真実と和解委員会の話が持ち上げられ、1960年(独立時)から2003年までの犯罪に対して裁こうとし、結局失敗しました。40年以上のスパンで真実を求めるのは非現実です(そもそも多くの証言者が亡くなっている)。しかし最低、最近の主要な戦争犯罪人は裁くことはできるはず。これができない限り、同じ戦争犯罪人が残虐行為を続ける一方です。
 
「しかしあなた一人が頑張っても状況は良くならない」そう、確かに私一人には変革する権力はありません。しかし、最低状況が悪化するのを止めたいと思っています。私や周りの関係者がコンゴ東部でできることは、これくらいの「平和構築」しかないかもしれません。「生命を救う」と同じレベルで、目標は高くないのですがこれが現実です。何とも悲しいことですが。。。
今日ある方(大湖地域を気にかけている方)とコンゴやルワンダの現状についてかなり深い話をし、いい勉強をさせていただきました。

その方は私の本「世界最悪の紛争『コンゴ』」を読んでくださったのですが、「内容がかなり悲観的、本当にコンゴとルワンダには希望がないのか」と早速聞いてきました。「コアな問題である、不処罰(impunity)や司法の問題を多少解決したら、希望は多少見えるだろう」と答えると、納得したようですが、その本人も私と同様に悲観的でありました。

私はコンゴ東部にいた時からこの不処罰の問題が大変気になり、いつも何とかできないものかと考えてきました。その方にも「日本は司法の協力ができないのか」と質問したのですが、「日本人には無理。」とあっさり答えました。「そもそも歴史や政治的背景を知らないまま、技術だけで協力をする。元戦闘員に職業訓練をしても、その元戦闘員がどの民族や背景の持ち主なのか答えられない」

そして続けてこう言いました。

「皆『平和構築』と簡単に言うけど、そんなきれいごとではない。ものすごく難しい。私も正直大湖地域の解決法はわからない」

これには同感しました。私は上記の本や講演などで、その実現の難しさを話してきたのですが、その一方で平和構築が簡単であるふうに語る人たちもおり、彼らは私の考えがネガテイブすぎると思っていたのではないでしょうか。しかし私は現実的(realistic)であるだけ。現場に行かないとわからない問題はたくさんあるのです。

(続きはまた明日)
「国境なき記者団」は今年度の報道の自由のランキングを発表しました。これは結構面白いので、ぜひ見てください。

http://en.rsf.org/spip.php?page=classement&id_rubrique=1034

そこで、”we see that economic development, institutional reform and respect for fundamental rights do not necessarily go hand in hand.”(経済成長、制度改革と人権の尊重とは必ずしも隣合わせではない)と話しています。よく国の背景として、人口の寿命、GDP、子どもの死亡率等等を基準とされ、報道の自由は注目されませんが、これは大事なポイントだと思っています。何しろ、「表現の自由」は国の発展に関連しているからです。

ここで言う「発展」は、決してインフラ等の外見的なものではなく、内面的な面です。政府の建設的な批評が出来る、また政府がそれをオープンに受け入れ、それを基に改善するところは、心身ともに市民も国も成長すると信じています。

開発の「優等生」と呼ばれているルワンダは、178カ国のうち169位にランクしました。昨年175カ国のうち157位だったのですが、大分落ちたことになります。外見だけに力を入れてきたことが証明されました。ちなみに今回のノーベル平和賞で中国の報道の自由が話題になっていますが、中国は今年171位にランクされ、あまりルワンダと変わりません。

ということで、もっともっと表現の自由に注目を!



ルワンダの「真」の野党3党が昨日国連安保理に、ルワンダの「政治危機」に即介入し、野党リーダーのビクトワール・インガリべ氏(14日に逮捕)の解放を求める手紙を出しました。

「真」と書いたのは、8月の大統領選挙に出馬した野党は現政権派である「偽物」と言われ(つまり民主主義があると世界に証明するためにつくられたもの)、選挙に出馬できなかった「真」の野党3党のうち、2党のリーダーは逮捕され(一人は6月以降、2人目は4月に続き、今回が2回目)、もう一人は亡命中です。何という混乱状態!

10月7日の大臣の就任式に、カガメ大統領は憤慨した口調で「ルワンダにはもう野党との政治的空間(political space)はない、拠出国(ドナー国)からの教訓はない」と述べました。人権に関して辛口である拠出国を非難したのです。

「野党」がいるから、ルワンダは民主主義があると勘違いしている人がいますが、そのような外見上の形式でなく、政府の「中身」も見て、判断してもらいたいものです。もちろん、カガメ大統領の中身(行為、背景、考えなど)もそうです。

以前平和学者の生み親であるガルトゥング氏が、「民主主義や人権が尊重されていても、自分が正しく相手は間違っているという傲慢な態度があれば、その国は平和ではない」と言ったことがありました。ルワンダは残念ながら、民主主義も人権尊重も謙虚な態度もありません。これからどうなるのか、本当に本当に心配です。

アフリカ・ガバナンス・イニシアテイブ(AGI)とルワンダ政府間のパートナシップを支援するために、イギリスのブレイア元首相が昨日ルワンダに来て、カガメ大統領と面会しました。

ルワンダ政府にとって最大の恥であった国連報告書が公表されてから、カガメ大統領が西洋諸国の
()政治家と面会するのは今回が初めてなのでは?普通ある人に「戦争犯」というレッテルが貼られたら、どんな親友でも、その人との面会を遠慮しがちです。スペインのサパテロ首相はカガメ大統領とMDGの共同議長なのですが、後者とは9月のニューヨークでの会議で避けていました、というか「公用で」さっさとスペインに帰国してしまいました。スペインでの市民団体の影響もあり、彼はルワンダの人権問題などに対する問題意識がかなり高いようです(まあ、ルワンダだけではないが。。。)。

反対にブレイア元首相はそんなことお構いなく、アドバイサー
(実際に何のアドバイスをしているのかも疑わしい)としてカガメ大統領と会いました。二人ともイラク戦争、コンゴ戦争(またルワンダ内戦)に関与したので、「戦争の友」として仲がいいのでしょうか。

それにしてもこの
AGIはどのような活動をしているのかしら??日本の政治家のように個人資産を国民に公開する透明性(transparency)や、大統領の任期を延長せず尊重することを勧めているのか。うーん怪しい!
今週10月17日―23日はコンゴ・ウィーク。アメリカNPO Friends of the Congoがコーディネートするこのキャンペーン週間は、世界最悪のコンゴ紛争を知ってもらうためのものです。日本では、大阪大学のVirgil Hawkins先生が中心になって大阪で企画が行われ、コンゴ・ウィークの開始日である今日、NGO「SESCO」が主催したコンゴセミナーに私が講師として講演をさせていただきました。

後半のパネルディスカッションで「もっとメデイアがコンゴ紛争を取り上げるべき!」という話になったとき、メデイアによる国際紛争への反応を研究しているVirgilさんが口にしたコメント:

「10月14日の読売新聞(朝・夕)に掲載されたチリ鉱山落盤に関する記事の量は、今まで取り上げられたコンゴ紛争の記事の5年分に値する」

参加者はシーン。私も同日の朝日新聞を読みながら、なぜ一事件に対してこんなに詳細に取り上げられる必要があるの?と思っていたのですが、コンゴ紛争の5年分だったとは驚きでした。

別にチリ鉱山落盤を軽視していいと言っているわけではないのですが、もっと国際記事をバランスよく取り上げて欲しいですね。同様な問題がアフリカで起きていたら(実はかなりの頻度で起きている!)、どこまで報道されていたことやら。6月のワールド・カップ中だったら、ちょうどアフリカブームになっていたから多少は関心があったかもしれませんが。

ということで、メデイアの方々、国際版、特にアフリカのニュースをもっと取り上げてください!TICADやアフリカ・フェスタなどを年に数回の企画をするだけでは足りなく、アフリカのニュースが日常的に聞けるぐらい身近にしてもらいたいものです。
今日はコンゴとルワンダのお知らせ

① ヒューマン・ライツ・ワオッチ東京事務所が

「コンゴ民主共和国:国連報告書が重大な犯罪を公表 ~法の裁きを保証するメカニズム創設に向け国際的な取り組みが必要」

の日本語版をHPに載せました。和訳、大変だっと思いますけど、お疲れ様でした!皆さん、見せてくださいね。



② 昨日のブログで野党リーダーの逮捕について書きましたが、その理由は、彼女がコンゴ東部にいるルワンダ反政府勢力(FDLR)と関わっているためだそうです。人権団体や他の野党は、この理由づけに対して抗議をし、また何の根拠なしに逮捕されている他の野党の二人の解放も求めています。

*****

コンゴとルワンダのことを一緒に書いてしまいましたが[また今までのブログでもそうですが)、両国で同時進行でいろんなことが起きており、それらがほとんどお互いに関連しています。だから1か国だけをフォローしてもわからないことが、地域という全体図で見ると理解することがあります。

以前、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で働いていたのですが、UNHCRのメリットは国境を越える難民を扱っているために、国単位でなく地域単位で状況を見ないと仕事ができなく、したがって全体図を見る目を養わせてくれました。このようなcross borderの特色がある団体はそんなにないでしょう。何しろ、、隣国にいる同僚とは頻繁に連絡を取り合っていたので親密な関係になっても、同じ国内で働く同僚を知らないといったことがよくあります。

この全体図を見る重要性は、今の研究などに役立っています。UNHCRに感謝!
以前このプログで、「アンサンスーチーさんのアフリカ版」として、ルワンダの野党リーダーであるビクトワール・インガリベさんのことを紹介しました。4月から自宅軟禁されている彼女が、今日警察に逮捕され、ある所に連れて行かれたとのことです。実はこの数日間、彼女の家は警察何人かに取り囲まれていて、恐怖心が漂っていました。

今年8月の大統領選挙に出馬するために、16年いたオランダに夫と3人の子供を置いてルワンダに帰国したものの、「ツチだけでなく、フツの犠牲者も悼むべきだ」の発言によってルワンダ政府から目をつけられ、自宅軟禁をされパスポートをとられるなど、さまざまな形で脅迫を受けました。彼女の部下も同じような目にあっています。

表現の自由がないルワンダでただ一人、現政権に対して声をあげていた人なので、大変心配です(声を上げた人たちはほとんど全員国外に亡命した)。

情報が入り次第、このプログでも更新したいと思いますが、これからどうなるの~?

コンゴの人権状況に関する国連報告書草案が8月下旬に漏れて以来、今まで手に入らなかったレポートや手紙もインターネットで見られるようになりました。このITは本当にありがたい!その中に、19948月に、つまりルワンダ虐殺が終わった直後、カガメ将軍(当時。現在の大統領)がブルンジにいる同僚に当てた手紙も公開されています。その内容は
 
「ザイール東部におけるルワンダ難民、そして国際社会のプレゼンスのせいで、『ザイール計画』が実現できなくなる。この難民の帰還後、我々は計画が立て始めることができだろう。彼らが早く帰還できるように準備を整っている。ベルギー、イギリス、アメリカの協力者もザイール東部にいる」
 
これが本物の手紙なら、この『ザイール計画』は何を指すのでしょうか?それはまさしく、1996年に起きたルワンダ軍による「コンゴへの侵攻・侵略」のことであり、それは1994年時から、あるいはそれ以前から計画されていたと言えます。
 
1996年のコンゴへの侵攻の目的のひとつは、虐殺の首謀者であるインテラハムウェを倒すためであったと言われるのですが、上記の手紙にはインテラハムウェ(虐殺の首謀者)については触れていません。この手紙が書かれている頃には、インテラハムウェは既にコンゴ東部にいてカガメにとって脅迫の存在のはずだったのですが。「インテラハムウェのせいで侵攻した」というのは、カガメの単なる口実だったとしか言えません。
 
ということは、ウガンダにいたRPF(カガメなどルワンダ難民によって設立されたルワンダ反政府勢力。1994年以降ルワンダ政権を握る)199010月にルワンダに侵入した理由として「民主主義を設立するため」「難民の帰還(人道的な理由)」と挙げていますが、本当はルワンダからザイールへの道を通過するためだったのでしゃないでしょうか。この侵攻の計画は、そもそもアメリカがカガメやムセベニと一緒に立てていたことはよく知られています。
 
国連報告書草案が漏れたおかげで、だんだんと真相が見えてきたというか、はっきりしてきました。この機に関係者全員が一気に機密を漏らしているという感じですね。
昨日私が「ベンダビリリ」のコンサートで楽しく踊っている時に、地球の反対のパリでルワンダ反政府勢力(FDLR)のリーダーであるカリクスト・ムバシュマナ氏がフランス警察によって逮捕されました。数日内に国際刑事裁判所(ICC)があるハーグに転移される予定です。
 
このFDLRの背景について簡単に説明すると、もともと1994年のルワンダ虐殺後にコンゴ東部に逃げた虐殺の首謀者が中心になって、ルワンダの現政権を攻撃するためにつくられました(現在はコンゴ人も多く含んでいる)。FDLRの大半はコンゴ東部にいるのですが、文民部門のリーダー格はヨーロッパにおり、そこからコンゴ東部にいる部下に指揮してきたと言われています。2009年12月公表された国連報告書によると、FDLRの資金源はスペインのチャリテイ-団体から北朝鮮の軍隊などです。
 
そのFDLRが何の罪で逮捕されたのか。2009年1月~12月に、コンゴ政府軍とルワンダ政府軍によるFDLRに対する掃討作戦があり(ルワンダ軍は「正式に」2月に撤退したが、その後コンゴ軍に「統合」し掃討作戦を続けた)、その際にFDLRは少なくとも市民1400人を殺害し[1月~9月]、また同時期に7500件以上の性的暴力を犯したと報告されました[この件数は2008年に起こったものの2倍]。
 
この逮捕は歓迎すべきいいニュースですが、気になるのはFDLRだけでなく、コンゴ軍やルワンダ軍も残虐行為に相当関与していたのに、後者は今のところ何の行為がとられていないことです。また、この掃討作戦は国連PKO軍が支援していたので、彼らもある程度の責任があるのでしょうか。こういった視点はないように思われます。
 
ところで、ICCは独自の警察がないため、戦争犯罪人や人道に対する罪を犯した人を告訴しても、彼らを直接逮捕できず、したがって彼らが在住している国の警察の協力が不可欠となります。逆にいえば、各国の警察の協力がなければ犯罪人が逮捕されることなく、犯罪人は普通の市民と同様に何の恐怖心もなく生活ができるということです。残念ながら政治的などの理由で、戦争犯罪人をなかなかICCに引き渡さないことが多く、その例としてコンゴ人のボスコ・ンタガンダ氏が挙げられます。(「世界最悪の紛争『コンゴ』」211ページを参照) 
このように戦争犯罪人がICCに引き渡さないのは、コンゴのような「腐った国家」だけでなく、「まともな国家」があるヨーロッパでも起きています。ムバシュマナ氏は2003年からフランスに住んでいるのにもかかわらず、7年後にやっと逮捕されました。また、昨年の11月17日、FDLRの代表のイグナス・ムルワナシカ氏と副代表のストラトン・ムソニ氏は、テロリストグル―プに入っていること、そして戦争犯罪とコミュニティーへの罪を犯したことで、長年居住していたドイツで逮捕されました。ドイツで現在調査が続いており、年度末には公文書ができあがるとのことです。

上記のFDLRのケースを見てもわかるように、時間がたつにつれてローカルな団体であったFDLRの関係者が倍増しました。これがグローバル時代の怖さです!だから小さな紛争が起きても、すぐに犯罪人を処罰するなど迅速的に行為をとらないと、犠牲者が増えるだけでなく、どこから手をつけていいかわからないほど問題が大きく膨れ上がり、解決が難関になります。理論ではわかっているけど、現実にはそういかないのですよね。。。ハー(溜息)でも希望を捨ててはいけない!
8月のブログに「ベンダ・ビリリ」のドキュメンタリー映画を紹介しましたが、今日はそのコンサートに行ってきて、思いっきり踊って騒ぎました。本当に力強い!今夜(10月11日)9pmのNHKのニュースに出ていたので、見た人もいたのでは?今年の6月のワールドカップ以来、アフリカの熱気が下がったのですが、このコンサートでまた一気に上がった?と思うほど観客が入っていました。ただあるウォッチャーは、昔ほどのパワーはなくなったのではないかと。それってもしかしてベンダビリリがスター気分になったからなのか。もしそうであれば、悲しいですね。

同じコンゴに関しては書きたいことがあるのですが、今日は興奮しすぎてそれどころではない。明日に回します。

劉暁波氏のノーベル平和賞受賞は、人権や平和推進活動をしている私にとって嬉しいニュースでした。本当におめでとうございます!昨年はオバマ大統領の受賞後アフガンへの戦争を始め、しかも授賞式で彼が「戦争は時折必要」と述べたこともあり、かなりがっかりしたのですが、劉氏はリスクを負いながらも非暴力で人権尊重を実現しようとしているので、喜ばしいものです。それにしても彼にはそのニュースが届いているのでしょうか。また彼の妻も行方不明になっていると聞き、大変心配です。

この受賞に対して中国政府は即反発し、ジャーナリストや人権活動家をシャットアウトし、またノルウェー大使を呼びつけて、中国とノルウェーとの関係が損なわれることになると警告。これってまるで最近のルワンダ政府の反応のよう!とついつい比較してしまいました。1週間前に公表されたコンゴの人権状況に関する国連報告書にルワンダの「虐殺」の関与の疑いが書かれていたのですが、それにルワンダは憤慨し、いろいろと国連に脅迫していました。過去にも、ルワンダ虐殺の開始直前に起きた飛行機墜落事件の責任者について書かれた報告書を巡って、ルワンダはフランスとの国交関係を停止したことがあります。失礼ながら、中国政府といい、ルワンダ政府といい、外部から見ていて醜い行動を起こしています。

人権といえば、昨日難民映画祭で「レポーター」というドキュメンタリーを観たことを思い出しました。この映画はいろいろと勉強になり、大変お勧めです!ニューヨークタイムズの記者、ニコラス・クリストフが20077月コンゴ東部への取材中、ンクンダという戦争犯で知られている反政府勢力の将軍に会ってインタビューをしたシーンがありました。(実は私も同時期にコンゴ東部で勤務していたので、なつかしい風景を見ながらセンチメンタルになってしまいました~。またンクンダとも2回会って話したことがあるのですが、詳細は著書「世界最悪の紛争『コンゴ』」の127ページをご参照ください)そこで、将軍が言った言葉に思わず笑いうなずいてしまいました。

「コンゴ(「アフリカ」の聞き間違いかもしれないが)には人権(human rights)は存在しない。強い者の権利(strong rights)しかないんだ」

確かにあっている!そしてこれってまさに中国やルワンダにも当てはまる言葉ですね!もちろん、日本を含む世界各地でも起きていることでもあります、悲しいことに。。。。弱い立場にいる者の権利(weak rights)を尊重する世界に変えていかなくては!劉氏を見習いましょう!

Twitterでルワンダと検索すると、今でも「『ホテルルワンダ』を観て泣きました」と出てくるほど、この映画は人気が高いようです。既に公開されて5年たっているのに!ルワンダを訪れる外国人は、必ずと言っていいほどこの映画でルワンダの事前勉強をしているようですが、この映画の主人公(ホテルマン)のルセサバギナ氏が1996年ベルギーに亡命していることを知っている人はおそらく少ないでしょう。
 
フツであった彼がツチ(彼の妻もツチ)やフツ穏健派1200人をホテルにかくまって助けたという実話を基づいてつくられた映画です。当然ながらツチ主体の現政権にとっては、彼はヒーローであるはずなのに、国外に亡命する理由があるなんて不思議だと思いませんか。彼曰く現政権に脅迫されたそうで(理由を忘れて、今思い出し中。。。)カガメ大統領を率いる現政権を批判しています。
 
その彼が101日公表されたコンゴの人権状況の国連報告書を「真実を伝えている」「フツだけでなく、ツチ現政権も残虐行為に関与していたことが明らかになった。両側に和解が必要」とコメントしています。彼に同意するルワンダ人はかなりいるそうです。
 
ルワンダ政府はルセサバギナ氏を見習って、頭ごなしに国連報告書を否定するのでなく、この機会に真実と向き合ってほしいものです!

1022日(金)、23日(土)に大阪で開催されるイベント、CONGO WEEKをご紹介いたします。私のコンゴ仲間が企画し、去年私も講師として話をさせていただきました。お問い合わせ等は、下記の主催者までお願いいたします。

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 CONGO WEEK「コンゴ民主共和国、無視され続ける世界最大の紛争」

 10/22()講演会・カフェ、10/23()チャリティイベント

主催:Virgil HAWKINS大阪大学准教授×NGO Peace Village×日本ルワンダ学生会議

  アフリカ中央部・コンゴ民主共和国(以下コンゴ)を知っていますか?この国では紛

争が勃発し、第二次世界大戦以降最大規模の約540万人が命を落とています。紛

争の一因は携帯・パソコン・デジタルカメラに不可欠な鉱物資源であり、その消

費者である我々日本人も決して他人事とはいえません。

 Congo WeekとはアメリカのNPO Friends of the Congoが、コンゴ紛争への認知を

深める為にコーディネートしているキャンペーン週間で、今年度は101723

です。世界40カ国が参加するグローバルな運動で、大阪はアジアで唯一「重点都

市」に指定され、その活動が期待されています。

 Congo Week HPhttp://www.congoweek.org/ 

Congo Week紹介動画:http://www.youtube.com/watch?v=q-W82R5FPyM 

 10/22は学生団体・日本ルワンダ学生会議が、ヴァージル・ホーキンス大阪大学准

教授による講演会を企画し、学生同士ディスカッションする時間も設けます。講演

会後のカフェもお気軽にお立ち寄り下さい。講演会又はカフェ、どちらか一方の参

加も大歓迎です。

 10/23NGO Peace Villageが、コンゴの鉱物資源や少女兵をテーマにした世界疑似

体験演劇を上演し、演劇の感想を皆で共有するワークショップを取り入れたチャリ

ティイベントを開催します。NPO Friends of the Congoを通じて、コンゴで紛争被

害にあった人々に募金致します。

 コンゴの未来について、あなたもいっしょに考えてみませんか?

 ◆◆講演会(予約不要・無料・日本語講演)◆◆

「コンゴ民主共和国の紛争を知る、考える、語る」

1022()16201750

場所:大阪大学豊中キャンパス教育実践センターⅠ・2階セミナー室1

(阪急石橋駅徒歩15)

講師:ヴァージル・ホーキンス(大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)准教授)

アクセス:http://www.cep.osaka-u.ac.jp/about_center/30a230af30bb30b930de30c3 

 ◆◆カフェ(予約不要・300)◆◆

「コンゴともよろしく」

1022()18101940

場所:大阪大学豊中キャンパス教育実践センターⅠ・1階食堂カルチエ

(阪急石橋駅徒歩15)

※コンゴ民主共和国とテレビ電話をつなぐ予定

アクセス:http://www.cep.osaka-u.ac.jp/about_center/30a230af30bb30b930de30c3 

 ◆◆演劇鑑賞+ワークショップ(要予約・300)◆◆

予約:氏名をご記入のうえpeacevillage8@gmail.comまでご連絡下さい

「コンゴ ―君に届け―」チャリティイベント

1023()18002000(1740開演)

場所:吹田市 豊一市民センター

(地下鉄北大阪急行江坂駅徒歩10分、阪急豊津駅徒歩15)

アクセス:http://www.sutv.zaq.ne.jp/shisetsu/institution/center_toyoiti.html 

 お問合わせ:japan.rwanda@gmail.com 

 主催:

Virgil HAWKINS大阪大学准教授(ブログ:http://stealthconflictsjp.wordpress.com/) 

NGO Peace Village(団体HPhttp://peace-village.jimdo.com/) 

日本ルワンダ学生会議(団体HPhttp://jp-rw.jimdo.com/) 

 

 

 

将来のキャリアで悩んでいる学生と昨日話をしました。この夏宇都宮大学などが主催した国際キャリアの合宿セミナーで講師から現場の生の話を聞き、また私の本「世界最悪の紛争『コンゴ』」を読んで理想と現実のギャップを感じ、「この複雑な世の中で自分は一体何ができるのだろうか」といろいろ考えているとのこと。
 
私の本の内容はあまりにも難解だと言われており(というかそもそもコンゴ紛争の背景が複雑なのだが)、1回読むだけでも忍術力が要るそうなのですが、その学生は2回も読んでくれて感激しました。しかもコンゴどころかアフリカにまだ行ったことのない人で、本を読んで「『平和以外に何でもある国』だなんてショック!」「コンゴ、どうなるのだろう!」と本気で心配していました。国外で起きていることを他人事でなく自分のこととして感じとってもらえるなんて、涙、涙。。。
 
と同時に、自分の本やブログに国際関係の裏(現実)をありのまま率直に書きすぎて、もしかして学生の夢を壊してしまっているのではと多少罪悪感がありました。まるで、サンタの存在を信じている子供に、大人が「そんなのいないよ」と否定しているようなものでしょうか。
 
もちろん私は学生の夢を壊す意図はなく、学生に現実を知ってもらった上で、考える、批判(批評)する、疑問を持つ、分析する、そして問題を解決するという力を培ってもらいと願っています。これらの力を身につけるのは、もしかして学生時代が最後のチャンスかもしれません。社会人になると残業などで社会どころか自分のことを考える余裕がなくなり、ひたすら上司に従って仕事を淡々とする「ワーキング・マシン」になってしまうからです。特に大きな組織では、そういう人たちを大勢見てきました。転職・留学などをする人は、多少その箱から脱出できるかもしれませんが。。。
 
思考力がない、あるいは、某首相のように新聞は読まずマンガしか読まない社会人が増えると大変危険です。(注:私は小学生のころ、「はだしのゲン」を読んで、原爆や平和のことを勉強させられたので、マンガが悪いと言っているわけではありません。ただそれだけを読むのでなく、新聞や小説なども読んで創造力や思考力を養う必要があると思っています)。紛争解決や平和構築の場を例にとると、紛争の原因や背景を追求せずに、反射的に「金と国連平和維持活動(PKO)さえ送ればいいや」といった単純な発想を持って、物事を片づけてしまいがちだからです。そして残念なことに、実務者の中にはそのような人はかなりいます。
 
学生の皆さん、確かに落ち込むこともありますが、夢は持ち続けてください!それは大事なことです。黒人差別がひどかった時代に、将来黒人系のアメリカ大統領が誕生し、また黒人奴隷の子孫がファーストレデイーになるとは誰も夢に思っていませんでした。このように不可能と思っていたことが将来実現することがあるのです。私もコンゴやルワンダに真の平和と安定が来る夢を持ち続けて、研究やアドボカシーを続けます。
 
コンゴの人権状況に関する国連報告書の背景に関して、昨日のブログに書くのを忘れたのですが、そもそもこの報告書は先月に公表される予定でした。関係者からコメントをもらうために、7月に報告書草案が関係者の間に回った際、ルワンダが憤慨し、88日にルワンダ外務大臣が国連事務総長に「この報告書を公表したリメデイアに漏らしたら、我々は国連の活動から撤退するー特にPKOの分野においては」という脅迫の手紙を書いたのです。その後、その草案から虐殺の単語を削除しようという動きが国連内であったらしく、それを止めるために誰かがその草案をLe Monde紙に漏らしたと言われています。
そのニュースがあっという間に国際メデイアに広がり、ルワンダに「戦争犯罪人」の汚名が着せられました。また、大きな騒ぎになっていないのですが、1994年現政権(ツチ)によるフツへの大量殺害について書かれた「発禁」されたはずの国連報告書もウェブに載せられました。そのような騒ぎの中、国連は報告書の公表を1か月延期することを決定したのです。
結局ルワンダ政府の脅しは失敗に終わりました。トーンダウンしたとは言え、最終報告書の内容は草案とほとんど違いはなかったからです。ルワンダの(感情的な)反応が原因で報告書が漏れてしまい、「優等生」という国のイメージにますます大きなダメージを与えてしまいました。全くの自業自得です。
10月5日の毎日新聞に、在京ルワンダ大使の記者会見でのコメントが載っていたので、ご覧下さい。
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20101005k0000m030033000c.html
実は在京ルワンダ大使がこのように記者会見を開いたり、主要な関係者に面会して事情を説明するといったことはこれが初めてではなく、200611月にも同じようなことがありました。1994年のルワンダ虐殺前に起きた飛行機墜落事件の責任者を巡ってフランスの裁判官が「現政府がしたもの」という内容の報告書を発行し、ルワンダ政府が憤慨してフランスとの国交関係を停止した時でした。このようなルワンダの恥かきが、今回が最後であればいいのですが。
国連人権高等弁務官事務所(UNHCHR)は10月1日、1993年―2003年に起きたコンゴ民主共和国(旧ザイール)の人権状況に関する報告書(Mapping Report)を公表し、ツチ主体のルワンダの現政府軍らが1996~97年、ザイールに避難していたフツ系ルワンダ難民やコンゴ住民ら数十万人を殺害したことについて「虐殺の罪に当たり得る要素がある」と結論付けました。この人権侵害の調査は最も包括的であり、1,280人以上の目撃者のインタビューを基に全国で起きた617の事件が掲載され、少なくとも1500の参考文献が収集され分析されました。ただし本報告書は司法調査ではなく、コンゴのどの地域で何が起きたかを浅く広く調査するものであり、「虐殺」と断定するかについては裁判所が決めるとしています。
 
8月下旬に仏紙Le Mondeに漏れた報告書草案の書き方はかなり断定的で、ルワンダ側は報告書公表前から猛反発し、スーダン・ダルフール紛争の国連平和維持活動(PKO)に派遣しているルワンダ部隊を撤退させると脅迫しました。国連潘事務総長が9月7日にわざわざルワンダを訪問し、「ルワンダ部隊を撤退しないように」と要請をしたほどです。報告書が公表される前日に、ウガンダ政府もソマリアに展開しているアフリカ連合に派遣している部隊を撤退すると発表しました(その後撤回する)。コンゴの隣国の外圧もあったからか、報告書草案と比較すると最終版のトーンはソフトになっており、「外見上は(apparent)」「伝えられるところによると(allegedly)」という単語が多少増えたのですが、内容は基本的に同じです。
 
この報告書で最も汚名を着せられたルワンダ政府は、ブルンジ、ウガンダとアンゴラの3カ国と共に報告書を否定しています。その一方で、コンゴは「報告書は詳細に書かれており、信頼できる」と報告書を歓迎しました。北米にいるコンゴ人のダイアスポラ(現カビラ政権から逃れた難民も多い)は「草案を最終版報告書として公表するべきだ」とデモを行い、ルワンダの野党は「残虐行為を犯した現ルワンダ政権は、国を統治する資格も権利もない」と訴えています。
このコンゴでの「虐殺」は決して新しい情報ではなく、国連の調査団によって1998年に既に知られていました。当時のL・カビラ大統領からの許可がおりず国連は調査を中断したのにもかかわらず、国連や人権団体は報告書を公表したのです。私はコンゴ東部で勤務中、現地の人やルワンダ難民からルワンダ軍やコンゴ軍・武装勢力によって殺された証言を何回も聞いていたので、この真実が公表されて個人的に嬉しい思いです。コンゴでの「虐殺」に関しては、著書の「世界最悪の紛争「コンゴ」~平和以外に何でもある国」(創成社)の11,44,166ページにも書きましたので、ご覧ください。
今回の調査に関しては、2005年にコンゴ東部で大規模な墓地3か所が発見され、翌年当時のアナン国連事務総長が調査することを決定したのです。この報告書を機に、大湖地域レベル、また国際レベルにおいて不処罰(impunity)を終わらせることができれば、大湖地域に持続的な安定をもたらされることができるでしょう。しかし疑問がいくつか残っています。ここでは2つ挙げたいと思います。

 
まず初めに、ルワンダ、ウガンダやブルンジが過去の「Justice」(裁判や司法)より、現在の「Peace」(=見かけだけの政府、軍の形成や国交関係)を優先させていることです。今回の報告書に対する3カ国の反応は、「せっかく大湖地域が安定に向かいつつあり、また3か国はPKOに参加するなど世界の平和のために貢献しているのに、その努力に関して報告書は何も触れず」「10年前のことを今頃掘りおこしても遅い。この報告書が原因で再び不安定にする」「『二重の虐殺(double genocide)』の理論の妥当化している(1994年のルワンダ虐殺では一般的にフツ過激派がツチを虐殺したと知られているが、その反対もあったという意味)」という議論に集中しています。紛争の原因や要因を対処せず、形式の和解だけをし、過去の「臭いものには蓋をする」という態度があるため、現在も人権侵害という悪循環が続いています。実際に今年730日から82日までに、コンゴ東部では武装勢力が女性235人、少女52人、男性13と少年3人を数回にわたって集団レイプをし、家900軒を略奪し、116人を拉致したという事件が起きました。(迅速に処理しなかったPKO軍は過ちを認めた)。

2つ目に、報告書の次のステップとして、当然司法的なアクションが期待されますが、それが大変疑わしいことです。コンゴのアトキ国連大使は「犠牲者のために裁判と補償が必要。国際社会と一緒に司法制度を整備する必要がある」という声明をだしましたが、それは市民を平静にするための「芝居」であったと言われています。今年6月初めにコンゴ人の有名な人権活動家が首都キンシャサで殺害されて以来、コンゴの市民団体はますます政府に不信感を抱くようになり、政府にとって野党以上の脅威となりました。そして報告書草案が漏れたことを機に、93220の団体が裁判、犠牲者への補償、そして和解を政府に求めました。来年11月の大統領選挙を控えている現在、政府は市民の支持を得るために、市民団体の要請に対処していると返答するしかなかったのです。

司法的な行為に対するコンゴ政府の献身さが定かでないのは、もし本当に加害者を裁くのであれば、19967年当時少将であった現カビラ大統領、そして彼の「親分」であるカガメ大統領(当時副大統領・防衛大臣)も裁かれることになるからです。最近は信頼度が低下したとはいえ、後者は西欧諸国とは親密な関係にあるため、これはほとんど非現実的な話です。その証拠として、ルワンダ国際戦犯法廷(ICTR)では現ルワンダ政権(RPF)の人は誰一人起訴を受けていません。ICTRの前デル・ポンテ検事はカガメ大統領と政府軍を起訴する証拠があったのですが、カガメ大統領と現政権を守る「取引」があるアメリカ(ポンテ検事)から、その告訴を取り下げるように要請を受けました。彼女はそれを拒絶したため、2003年アメリカによって解雇されたのです。また今回の報告書に関しても、ルワンダ政府はダルフールからPKO軍を撤退しないことを条件に、国連は司法的な行為をとらないという「交換条件」があったと言われています。
 
国際刑事裁判所(ICC)に関しては、20027月以降起きた戦争犯罪人や人道に対する罪のみを取り扱っていますので、ICCのタイムリミットを変えない限りこの報告書に掲載されている加害者はほとんど起訴を受けることはありません。2002年以降起きた戦争犯罪に関しては、コンゴ政府は既にICC4人起訴していますが、全員「プチ」戦争犯罪人であります。主要な戦争犯罪人の一人であるンタガンダ氏(コンゴ武装勢力の元幹部)はICCに起訴を受けていますが、コンゴ政府との間で彼を逮捕しないという密約が結ばれたといわれています。もう一人のンクンダ氏は、1年以上にわたってルワンダ政府によって不法に「逮捕」されています。この二人に対して、国連は沈黙状態を保っています。このような主要人物が起訴されない限り、上記のような集団レイプ事件は絶えないだけでなく、近い将来紛争が再燃してもおかしくないでしょう。
 
最後になりますが、報告書に書かれたコンゴでの残虐行為は日本の市民とも決して無関係ではありません。日本を含むドナー国によるルワンダへの拠出金が19971999年の間に$26.1millionから$51.5 millionへと倍増しましたが、そのおかげで、ルワンダはコンゴに侵攻・侵略できたと言われています。我々の税金がODAPKOを通して、このような紛争にも使われている可能性を認知した上で、現地で起きている人権侵害にも目を向け、人権外交について議論をする必要があります。
 

待ちに待った、1993-03年にコンゴで起きた人権侵害に関する国連報告書が今夜(日本時間)公表されました。「虐殺」の可能性があると書かれていますが、草案よりトーンがソフトになってしまいました。「虐殺」の加害者もぼんやりと書かれている感じ。。。国連人権高等弁務官事務所がルワンダなど関係国との妥協の結果でしょうか。まあ、一時は「虐殺」という単語が報告書から削除されるかもという心配があったから、残っただけでもましと言えるのかな。

報告書の分析に関しては次回書きたいと思います。

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プロフィール
HN:
米川正子
性別:
女性
職業:
大学教員
趣味:
旅行、ジョギング、テコンドー、映画鑑賞、読書
自己紹介:
コンゴ民主共和国(コンゴ)やルワンダといったアフリカ大湖地域を中心に、アフリカでの人道支援や紛争・平和構築を専門としています。
過去にリベリア、南ア、ソマリア、タンザニア、ルワンダ、コンゴなどで国連ボランテイアや国連難民高等弁務官事務所職員(UNHCR)として活動。南アの大学院でコンゴ紛争について研究し、2007年―2008年には、コンゴ東部でUNHCRの所長として勤務したこともあり、その経験を活かして現在アドバカシ―に力を入れています。
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